9月08日

10回目の稽古ですか。

記念すべき、とでも言いましょうか。

担当は演出助手に戻りまして、引き続き記録として残させていただきます。


前回の稽古の最後に通しを行い、その日の内に、全員に演出家の感想を共有し、

この日はその振り返りと実践からスタートした稽古時間となりました。

主に「返し」と呼ばれるこの作業ですが、作品の流れを実感した上で行うそれは、

各々が、作品の中で求められている役回りを実感できたものになったと思います。


稽古場の空間を二つに分け、舞台面を再現した場所で演出が稽古を行う横で、

助手が見守る中、他の場面の俳優たちは熱心に台詞の復習をしていました。

掛け合いができる共演者を捕まえて、台本と向き合って自主稽古をしたり、

助手に外から見てもらって役の印象を聞いたり、助手からも提案をしたり。

返し稽古の後半には、演出家含め何名かの撮影の為に舞台面が空いたので、

自主稽古を、舞台面の再現空間の方で、俳優達が皆さんで進めていました。


返しの稽古で4時間が経過して長めの休憩をとったその後は、再びの通し。

演出家は俳優に、助手は音響の仕事に付きながら、皆さんの演技を観察。


通しを行ったのは本日で二回目でしたが、確かな手応えを実感しました。

皆さんが、作品や自らの役、そして相手とのやり取りに丁寧に向き合い、

自らが担うものを見ている人に届けよう、と真摯に取り組んでいました。


とはいえ、本日も音響の仕事の横で観察していたに留まってしまうので、

今回も、強く印象に残ったポイントを以下に記していこうと思います。


①自主性

先に、返し稽古以外の俳優さんが自主稽古をしていたと記述しましたが、

俳優だけで自主稽古に挑むという図は他の団体でもある光景かもしれません。

しかし、いざ自主稽古してくださいと言われると困る人も多いと思います。

というのも「あの人に話し掛けて良いのか」と探る時間が発生する為です。

幸い座組に、傍若無人な振る舞いばかりの方がおらず、皆さん優しいので、

多かれ少なかれ他人への気遣いが皆さんに見え、結果一人になる姿も見ます。

しかしこの日私が注目したのは、「全員が信念に基づいて稽古をしている」

と感じられる光景があったからでした。一人で練習している人も含めて。

その場の全員が、自分がやるべきことを把握し、協力を求め、惜しまず、

共演者から学びつつ、共に作品を完成させようと全員が意気込んでいる。

なおかつ、「自分がここに存在している意義」を見る人にも伝えようと、

自分が演じる役がどうあるべきなのかを模索している俳優が多かったです。

『あ、ちゃんと自主稽古になっている』と感動したのをよく覚えています。


②役作り

この言葉を使っておいてなのですが、私はこの言葉が好きではありません。

とはいえ、俳優という存在とは切っても切れない関係にあると思います。

自分の身体と心と頭を、登場人物(キャラクター)という他人に貸す際に、

自己と同一視してしまうのは、かなり危険な行為であると考えています

(ここに私が気が付くのに結構時間が掛かってしまったのはまた別の話)。

「このキャラクターならどうするのか」という客観的な分析をした上で、

自分がそれを表現するために何をするべきなのかを考えなくてはならない。

この日の通しの前、私が俳優さんのお手伝いをする中で伝えた内容です。

伝え方は人によって異なりますが、これまでの稽古で皆が輝きだした今、

自分という存在を使って役を顕現する為の段階に、全員が進んでいます。

中には、演出家の意見と異なる解釈をした為に、壊すか悩んでいる人も。

今作は特に、演出家の意見が絶対ではないという方針で進んでいるので、

参加してくれた皆にとって良い時間になるように、私も尽力しています。


今回特筆して記録しておきたかったのは以上です。

作品だけでなく、座組全体として前を向いている様子が私に見えているので、

この記録をご覧になっている皆様に、少しでも伝わっていましたら幸いです。


そして、誠に勝手ではございますが、【比翼連理の果て2024】稽古場記録は、

この記録を持ちまして最後とさせていただきます。

これまで一度でも目を通してくださった皆々様に、厚く御礼申し上げます。

理由としましては、いよいよ集中稽古に入り、大詰めになる中で、

・記録記事を書く時間が無い

・筆者が音響を担当する本番に向け、余裕が無くなってくることが予想される

・ここから先の記録にはどうしてもネタバレ要素が多分に含まれると思われる

為です。楽しみにしてくださっていた皆様には申し訳ございません。


本番まで二週間を切り、日曜日は有り難いことに満席となりました。

土曜日のお席はまだまだ余裕がございますので、是非いらしていただきたいです。


ご予約はこちら


それでは、皆様にとって素敵な日々が訪れる事を願って、記録終了とさせていただきます。

ご愛読、ありがとうございました。


筆責:友稀(演出助手)


Project Act Tokyo

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